「教えて茶道」Vol,76

 

「秋の茶花と茶陶の里を訪ねて」のツアーに参加しました。
信楽に窯を築き、茶陶ひとすじに作陶されておられる陶芸家杉本貞光
先生は約400種類の山野草の育てていらっしゃいます。この季節に
咲く茶花を自然のままで鑑賞させてもらい、自分達で板皿作りも楽し
むと言う企画でした。
まずは、先生のお話から、ステキなお話でしたので、覚えている限り
紹介いたします。
山野草は15年前から集め始めたが、戸隠のもの、白山の物、外国産
が、自然のままで見られる。
深山の花は雑菌に弱く、また、それぞれがいろいろな自然の中で育っ
ているから、根づくもの、根づかない物、同じ条件にしても枯れてし
まう物と、どれほどの知識があっても、実際に育てるのはたいへんな
ことである。
自分の庭に植えたいと思うのは、自分の自我である。
日差しの工夫、水やり等、条件を同じにしても、育たない物もある。
それは土の持つ命の違いではないかと思う。
大亀和尚に、自分の焼物を見せた時
「君は上手すぎて、かしこくていかん」と言われた。
上手と言うのは手先が器用と言うことであり、賢いとは頭で考えて作
るということになる。
生命があるなら、考えずに作れと言われ、
どうして作ったらよいかと思った時、自然に親しみ自然の中に自分を
置く。自然活動に自然に溶け込んだ生活をするのが自然だと、それか
ら、花も育てるようになった。
お茶文化より生まれた焼物は、利休に始まって、利休に終わる、桃山
文化を見ろと言われる。時代背景は変化しているが、利休の原点は
見つめなければならないし、利休を目指して作っている。
今、信楽、伊賀、黒は長次郎、赤は光悦、高麗は井戸茶碗と粉引き風
をねらって作っている。
信楽
信楽は1200年からの歴史があり、始めは農家の種壺や庶民の生活
道具であった。素朴なものであった。
桃山の頃、庶民の焼物、雑器から茶人の眼力で花入れや茶道具に転用
された。
だから、見たてた人の名前が付いている。
紹鴎信楽(じょうおうしがらき)利休信楽(りきゅうしがらき)
素朴から、一日で言えば夕方、一年でいえば秋、一生で言えば老いの
頃、終局の亡びる美、朽ちた美、これが信楽の美といえる。
伊賀
古田織部が指導して始まった60年間しか焼かなかった。
茶道具として生まれたそれにプラス茶人の精神が入っている。
耳がついていても、作為のある耳付きである。造形からきた耳である。
信楽は耳があると言っても、必要で耳がついている、役目がある耳であり、
作為のあるのとでは、おのずと違いがある。
ゆがみの美、作為が強い。造詣の美である。
伊賀は、何回も何回も窯に入れ、灰が被り、ビードロがとけてくっつ
いて割れる、そうして作り上げる。だから、膨大な費用が必要であった。
藤堂(とうどう)伊賀と言われるのは、藤堂家が起こしたことで知られ
ている。
長次郎
利休の世界である。それまでは唐物しか茶道具はなかったが、長次郎の
腕を借りて、利休が自分の思いの茶碗を作った。
すなわち、口が入っていて、飲みやすいように、胴が膨らんで、冷めな
いように、高台がついて、手がかりがいいように、一番適切なものを
盛りこんで、無駄を省いている。
一服のお茶をいただくのに、自然な形をしている。
光悦
作為は垢抜けしている。丸かおけ型で、非常にすっきりしているのが
特徴である。
高麗もの
信楽と一緒で、民族の違いがあるだけで、庶民的である。
最後は李朝か信楽の、作為のない、自然のまま、自然に帰るという風に
なるだろう。
最後に、形として「うずくまる」という形がある。
これは、種を入れる壺からきているが、茶人が見つけ、名付けた。
ツボは小さくとも、大きくとも力、パワーがある。その中に宇宙間がある。
「壺中天」(こちゅうのてん)中国の故事より、小さな壺中に仙人が住居
して、大宇宙を楽しむとの意味がある。かくて茶室は壺中の別天地と観ぜ
られ、俗説の境界(他界)とされる。
形は肩肘張らず、おだやかな感じで、人がうずくまっているという形である。
植物も、焼物も、自然を求め、そのものの持つ道理にかなうようにしなけれ
ばならない。

先生のお話を聞いた部屋の床には、
「木火土金水」(もっかどこんすい)(宇宙、世界の意味)の軸が掛けてあり、
花入れは、信楽のうずくまるで、
花は、裏山に今咲いている「見返り草」
シソ科なので、葉は虫食いでしたが、これまた、趣がありました。

昼食の後、先生の説明を聞きながら裏山の山野草を見学しました。
朮(おけら)日本産は白ですが、中国産が咲いていました。
見返り草
雄山火口(おやまぼくち)
黄色ほととぎす、など。
春にはもっといろいろな花が咲くそうで、白根あおいは谷一面に咲くそうで
それを又見に来たいと思いました。

それから、自分達の板皿作りです。
めいめい、思い思いに、土を1センチくらいの太さに伸ばして、
表面には、絵や字を書いて作りました。
でき上がりは、来春、それまでどんな風に仕上がるかが楽しみです。