「教えて茶道」Vol,190

週末の寒さは三月にしては厳しい寒さでした。が、やはり暖かくなっ
てきました。寒さで首も肩もちぢめて歩いていたのに、ふと辺りを見
渡せば、梅は元気一杯に花びらを開かせ、あちらの枝垂れ梅も、こち
らの紅梅に、白梅にと美を競うようです。いつの間にか春は次ぎの出
番をねらっているようです。
紅梅白梅のように、お菓子の御銘に「咲き分け」白、ピンクの半分ず
つのきんとんがあります。梅を表しています。決して紅白歌合戦とは
思わないでくださいね。三月では桃の季節、「もも柳」でしょうか。
お稽古中に茶杓の銘を考えますが、やはり季節のものを考えたいです。
禅語からの銘も確かに品がありますが、年中使用できる銘は、物足り
なさを感じます。今、この時期(少しは先取りがいいですが)に応じ
た銘がいかにもお客さまをもてなしているという実感があります。
そして、稽古なのですから、いろいろな名前を付けられるのますから
大いに頭をひねって考えてください。ただし、梅、桜、とかの時期の
花の名前を単に言うのではなく、風情のある言葉を言ってその花を思
い出させる銘にしましょう。それには稽古場だけでなく、本や新聞、
時には美術館などへも出かけましょう。絵の題名にも素晴らしいもの
や、これは茶杓に良し!なんて発見もあります。
勿論茶道具の歴史的名品が展示されてある美術館へ出かけ本物を見て
おきたいものです。茶碗や茶入などの道具類は稽古では写しと言われ
るものですが、本物の名品を鑑賞することによって、その美しさ、肌
の具合、壊れやすさ、その道具がそれだけ大切にされてきたかなどを
知ることができます。本物の名品を多く見れば見るほど、その基本的
な知識が身につくだけでなく、良い物がどういうものなのかが次第に
分かるようになるでしょう。そして茶道具の種類を、叉茶道具の奥の
深さをさらに知るようになるでしょう。

<古筆 こひつ>

継色紙 つぎしきし
     古筆。伝小野道風筆 。古今集・万葉集などに見える古歌
     を書写した私撰集。もとは粘葉装の冊子本であった。白・
     紫・藍・黄などに染めた鳥の子の方形の料紙二枚を継ぎ、
     和歌一首を書写しているので継色紙という。散らし書は自
     然で、非常に巧妙であり、老蒼高古といった趣がある。半
     首切・木之葉色紙とも言われた。

通切  とおしぎれ
     古筆切。古今集の断簡。もとは歌合に用いるための料紙を
     横にして用いたものと思われ、表面は銀泥の界線が縦に引
     かれているところから筋切と呼び、裏面はトオシの目に似
     た布目が出ているところから通切と称されている。筆者は
     藤原佐理と伝えられているが、藤原定実とする説もある。
     一面十行書、和歌一首二行書で、同筆と認められるものに
     「元永本古今集」・「西本願寺本三十六人集」などがある。
     名古屋関戸家には序文の付いた上卷一冊(完本)、藤田美
     術館(筋切八葉、通切二葉)および某家(筋切四葉、通切
     四葉)に各一帖が所蔵されている。

戸隠切 とがくしぎれ
     古写経切。伝聖徳太子筆。法華経の断簡、もとは巻子本。青み
     を帯びた薄墨色料紙に一行に八基の宝塔を雲母で押し、塔心に
     経文を一字ずつ書写している。書風は藤原定信風で、字形にも
     点画にも独特の偏奇がある。現在、戸隠神社に零本四巻が伝え
     られている。

栂尾切 とがのおぎれ
     古筆切。伝紀貫之筆柱本万葉集の断簡。柱本万葉集は紀貫
     之の筆蹟といわれるが、断簡は伝源順(911−83)、または
     伝宗尊親王(1242−74)筆とされている。鎌倉切ともいわれる。