「教えて茶道」Vol,189

2月29日に夜咄の茶事の稽古がありました。
茶事の中でも、夜咄の茶事は、冬季に限り行われるもので、昨今で
は十二月から二月いっぱいにかけて催されるのが普通です。案内の
時刻は、日没により異なるそうで、夕刻よりです。
が、何しろ主婦ばかり夕刻の多忙な時期にはできません。そこはお
稽古、11時より電気を消して夕刻の時と想定して蝋燭の火でいたし
ました。
役割はくじ引き、懐石も皆で分担して作りました。
私は亭主に当たりましたので、懐石はゆっくりとは味わっておられ
ませんでしたが、勉強にはなりました。ちょっとご紹介いたします。
献立表                            
    甘酒 (待合にて)
    向付  ひらめ 穂じそ 大葉 山葵         
    汁   粕汁 大根 人参 こんにゃく 油揚げ    
    煮物  ふろふき大根 柚皮 柚味噌 人参 豆苗菜  
    焼物  鰆味醂焼 大葉               
    進肴  小えび2 筍1 蕗2 干椎茸1/2     
    箸洗  梅干 昆布茶                
    八寸  からすみ 甘栗               
    香物  壬生菜白菜巻 赤蕪 奈良漬         

道具類
   軸   「柳緑花紅」 前大徳寺 教道
   濃茶入  饒釉(にぎゆう)茶入 吉向十三軒
   仕覆   俵屋金襴
   茶杓   銘「慶雲」   前大徳寺 戒堂 
   棗    芽張棗 (めばりなつめ) 五代宗哲
   濃茶茶碗 銘「野遊び」 弘入
   薄茶茶碗  桃柳   永楽
         わらび絵 京焼 国領
   干菓子盆  霰菱盆  一閑
   炉縁    木地 吉野蔵王堂の古材で造った中の一つ
   水指    信楽 侘びたものの方が良い 備前・信楽とか

留意事項

・ 寄付きにて玉子酒、甘酒、生姜湯を出す。
・ 向え付けにて主客手燭交換をして無言で総礼。
・前茶(ぜんちゃ)水屋道具で薄茶を大服に点てて出す。
 菓子は出さない先の玉子酒、甘酒、生姜湯等がお茶うけとするから。
・客は おもあいでいただく。
・ 炭手前、灰器と共に手燭を持参する。
・ 香合拝見に出す時に手燭も一緒に出す。
・ 客の拝見が終ると、お詰は手燭を茶道口に返し、香合は正客と出
 会いで返す。
・ 懐石盆を運ぶ時、膳、膳燭、膳、膳燭と持ち出す。
中立ち
・ 石菖(せきしょう)を鉢にいれて床に荘る。
・ 短檠(たんけい)のすずめ瓦を下の皿に下ろしす。
・ 喚鐘(かんしょう)を「大・小・中・中・大」と打つ。
・ 濃茶点前時も、建水と共に手燭を持参する。
・濃茶茶碗を出した時手燭を出す。茶碗、手燭と送る
・ 続き薄茶が約束で、濃茶茶碗、建水を持って下がる。
・ 座布団、手焙り(てあぶり)、煙草盆、干菓子盆を運ぶ。
・ 「止め炭」箱炭斗を用意して炉中の乱れを直して炭をつぐ。

石菖(せきしょう)
花名。石菖蒲ともいう。種油や蝋燭から発散する由縁を吸収する性質が
あるとされ、夜咄の席の床に置かれる。

喚鐘(かんしょう)
青銅製の小さな釣鐘。茶席の準備が整い客の入席を請う時、合図として
打つ。

短檠(たんけい)
灯倶の一種。利休好みは、総体黒塗で、高さ四寸、裾幅七寸三分でやや
上方が狭まる台箱の背面に、高さ一尺一寸の板柱を立て、上から一寸八
分下がった所に丸穴を開け、さらに下がって火皿受の金輪を取り付けた
もので、その金輪上に楽焼の雀土器を置き、長灯芯を柱の上の穴から後
ろに垂らして一つ結ぶ。席の大小、月夜・闇夜の別などにより灯芯の数
を加減する。四畳半の席では貴人畳の勝手付に置き、初入りには雀土器
の蓋をし、後入りには蓋をとって下皿の上に掻立て用の黒文字の上にの
せておく。二畳台目以上の席で用いる。
◎  灯芯は七本か九本
  灯芯は折れやすいので湿したタオルでまずくるむ。
  からまないように並べる。穴にとうして芯の先を揃える。
  油はなたね油、サラダ油でも代用できる。入れ物の1/3くらい入れる。
  芯の先の方から油に浸しておく。
  すぐには火がつき難いのであらかじめ、和蝋燭もつけておく。


<古筆 こひつ>
紙捻切  こよりぎれ
      古筆切。伝藤原差理筆。道斎集の断簡、もとは冊子本。
      線が紙捻のよじれたのに似ているためとか、また紙捻で
      仮に大和綴にしていたので、この名があると言われる。
      料紙は色紙・打雲・飛雲紙・素紙などを混用、金銀の砂
      子を粗く撒いている。書風は雄勁だが、筆癖がある。

松籟切 しょうらいぎ
      古筆切。伝藤原行成筆。十番歌合の断簡。もと三井松籟
      が所蔵していたのでその名がある。もとは卷子本、料紙
      は唐書き、書風は行成の孫伊房の書風に似ている。自由
      に速く書き流したようであり、筆意はよく暢達している。

寸松庵色紙  すんしょうあんしきし
      古筆。伝紀貫之筆。古今集の四季の歌を書写してあり、も
      と堺の南宋寺の襖に三十六枚押されていたのを佐久間将監
      真勝がそのうちの十二枚得て、一枚ごとに歌意を描いた扇
      面とともに帖に押して愛蔵した。真勝が大徳寺の龍光院に
      隠居所寸松庵を建てて珍重したところからその名があり、
      さらに同じ色紙はすべて寸松庵色紙といわれるようになっ
      た。もとは粘葉装の冊子本。料紙は布目打ちのある唐紙、
      型文様は唐草・雲鶴・亀甲・草花のほか、他に類のない珍
      しい文様がある。書風は脱俗超妙にして典雅である。伝小
      野道風筆「継色紙」とともに茶室の床の掛物として尊重さ
      れている。継色紙・升色紙を加えて三色紙という。