「教えて茶道」Vol,177

先日、友人の友人、その方は八十八歳の米寿のお祝の茶事を催され、私ど
も、七人がおよばれに参加いたしました。
まずは露地を通り、腰掛け待合へ進みます。周囲は中小の工場が多い所で
したが、それを感じさせない静寂がありました。
四畳半の茶室は二階に設えてあって、その部屋に入ればもう別世界。
炭手前があり、続いて懐石。それが叉素晴らしい!彼女の娘さんがお料理
上手で、どれもこれも料理屋さん並、いえそれ以上のできばえでした。
向付はイセエビのつくり、二回目の飯器にはお祝い事として、お赤飯。
椀ものはあわびシンジョ、水菜、ゆず、金片が入れてあり、蓋を取った時
思わず見とれていただくのが惜しい鮮やかな色彩で、勿論お味は勿論バッ
チリでした。
焼き物は鯛の頭付き。頭としっぽは飾り塩で焼かれ、一人分づつ取り易い
ように、食べやすいような大きさに切り分けてあり、大皿に緑鮮やかなバ
ランの葉がしかれその上に頭と尻尾の間に鯛の切身が収まっておりました。
煮物はうなぎ、小芋、紅葉ふ。酢の物は貝柱、ほうれん草、食用紫菊、お
ろし合えで、これも彩鮮やかで上品な味でした。
八寸は、子持ち鮎、鹿肉の燻製(手作り)むかごの松葉通し。
これを書いていても思い出してよだれが出そうですし、どれもこれも創意
工夫があり、寿命が一才も二才ものびた感じがしましたよ。
お菓子も手作りできんとん。秋の山模様を思い出させる色に、その中にぎ
ゅうひに包まれた栗アン。
それから中立ちをして濃茶、続いて薄茶をいただきました。
八十八歳のご本人さんはお茶を続けてこられて、このような茶会がお出来
になりますが、それをお手伝いされる料理上手な娘さんが側にいらっしゃ
る幸福が彼女にはありました。それにあやかって、私達も元気でお茶を続
けたい、見習いたい、今度は卆寿のお茶事をたのしみにしています等と言
いつつ退出した次第です。
素晴らしい道具類、楽しい、肩のこらないそしておいしい料理がいただけ
るお茶事には何度もおよばれしたいものですね。


<炉>について
炉手前とは炉を用い行う手前のことです。炉は団炉裏の略語で鎌倉時代す
でに一般に炉のような形で暖房用としたものがあったが、茶の湯に取り入
れらたのは村田珠光が四畳半の座敷に及台子を用い、取り合わせたのが初
めとされています。その後、紹鴎、利休時代になって、炉の寸法が定まり
、今日使用している枠内一尺四寸(42.4センチ)の物が出来たのです。
炉にも種類があり、壁の上塗のように仕上げた炉壇が正式とされており、
毎年開炉(十一月)に塗り直しものを使用するのが理想です。
他に石でできた石炉、鉄炉、楽焼などの焼きものでできているものや、裏
千家十一世玄々斎がお好みになった大炉があり、他には水屋用に長炉、鉄
製丸炉があります。
茶席に炉は四畳半本勝手、四畳半逆勝手、台目切本勝手、台目切逆勝手、
向切本勝手、向切逆勝手、隅炉本勝手、隅炉逆勝手の八種類を切ることが
できます。これを八炉と呼び、それぞれ異なった点前があります。
炉と畳の間にあるのが炉縁(ろぶち)で、木地のものと漆塗のものと大別
します。
黒塗の炉縁を基準とし、蒔絵のあるもの、胡粉で置上げのしてあるもの、
歴代の家元方のお好みのものなど種々なものがあります。
炉中に五徳(ごとく)を据え、灰を入れるが、火のおこりを良くするため
に、火箸で灰を隅から掻き上げて山をそれぞれ向こう手前、左右と作ります。
炭手前に用いる湿し灰は酷暑に生灰をふるい、番茶の煮汁を注いで、よく
掻きまぜ、筵の上に広げ日光に曝します。これを何回も繰り返して、灰の
色が灰色から茶褐色になるように手を入れ、保存してきたものです。風炉
の灰型、蒔灰と同様に、火のおこりが良く、客の目にも美しく一服の茶を
楽しく喫んでいただこうという茶の心の表現の一つであります。


<襖の開け方>
襖(ふすま)や障子を開ける時は、戸の正面に座り、建付(たてつけ)に
近い方の手を引き手にかけて手が入るくらいに開け、さらにその手を敷居
から24、5センチ上の縁まで下ろし、押すようにして体の中心まで開け
ます。次に手を替えて開け、この時も同じ高さにして、手がかり分だけ残
しておき、引き手に手をかけて閉めます。
この間、使っていない手は膝の上に軽くのせています。
戸を閉める時は、これの反対ですから、手がかりを使って戸を引き出し、
体の中心まで閉め、次に手を替えて手が挟まれる位置まで閉めてから、引
き手で閉めきります。
手だけでなく、背筋を伸ばして上半身を少し前に倒して行うと美しくなり
ます。


<掛物 かけもの>

八双 はっそう 発装とも書く。仏画などの掛軸の装飾金具。八双金物に
        似るからいう。

風帯 ふうたい 表具の部分名称。掛物表具の天(上ともいう)の部分に
        幅を三等分した境目に天の長さだけ下げる裂。上部は表
        軸に巻き込んで留め、下部は左右の両端に小さな総の露
        花をつける。中国では驚燕とも払燕とも称して画面に紙
        条を付していた。これは燕が紙を恐れて近寄らぬという
        伝説によるもので、わが国でもこれに倣い、垂風帯を本
        式としている。風帯はこの他、掛風帯と称して、とりは
        ずしのできるものや、押風帯といって白い唐紙を用いて
        貼付けしたものもある。押風帯は元伯宗旦の好みと云え
        る。なお風帯の裂は普通一文字と同裂とするが、中廻し
        と同裂とした場合、特に中風帯と称する。風帯の幅は下
        一文字と同裂と同幅またはそれより少し太い目である。
        連幅・柱隠などの細物では風帯は一本とし、二本分の太
        さにし、その先端を剣先にすることもある。