「教えて茶道」Vol,167

先日私の茶の先生がお茶会の当番を受け持たれました。九月とは言え、暑
い日でした。幸いにも300人くらいの大勢さんのお客さんで、先生はお疲
れでもお喜びでしたが、高齢ですから、これから気が抜けてお疲れが出な
いかと心配しております。
皆様も、異常な暑さに、くれぐれもお気をつけて生活なさってください。
その時の会記を紹介いたします。

床   淡々斎筆   雲自作秋色
花   ススキ 金水引き 白むくげ 釣船木 友禅菊 萩 秋海棠
花入  唐物写    瓢形      竹龍斎造
香合  唐物     虫香合     存星(ぞんせい)
風炉先 鵬雲斎大宗匠好 雲月     先代 好斎造
風炉  鬼面風炉           淨林造
釜   肩衝筒釜           定林造
棚   淡々斎好  溜精棚      先代 好斎造
水指  淡々斎好  仁清写 耳付   仁阿弥道八造
薄器  玄々斎好 淡々斎箱 秋の夜棗 七代 宗哲造
茶杓  鵬雲斎大宗匠作    銘 武蔵野
茶碗  淡々斎手造 黒 銘 洗塵(せんじん)
替   淡々斎箱  井戸脇  呼銘 池水
替   鵬雲斎大宗匠箱 銘 武蔵野   即全造
蓋置  淡々斎箱  青釉       九代 大樋長左衛門造
建水  淡々斎好  唐銅口糸目    淨中造
菓子  初雁             鶴屋八幡製
器   天竜寺青磁
干菓子  兎  枝豆         鶴屋八幡製
器   輪花盆            宗哲造
煙草盆 鉄刀木(たがやさん)七寶透 手付   
火入  淡々斎好 黄瀬戸  渦    即全造

<注>
存星(ぞんせい)
中国漆芸の一種。填漆(てんしつ)とも言う。「君台観左右帳記」に、
色は黒あるいは赤、地は錦のように彫るといい、稀なもので明代の張
成を第一の上作としている。日曜雑器の存星とは技法も異なったかも
しれない。松屋三名物の一として存星盆が有名(散逸)、現存では根
津美術館所蔵の「菊絵丸香合」が有名。これの底に「存星造り」があ
るので存星を作者名とする所説も起こっている。

鉄刀木(たがやさん)
マメ科高木。マレー・インドなどに自生。心材は黒と赭の文様があり、
堅牢美麗で雨風に強く、建築器具の材料に利用。


<釜・風炉・灰型>

板釜敷 いたかましき 釜敷の一種。桐木地で厚さ三分、五寸角
             の板の四隅を一寸一分に切落とし、中央
             に経一寸の穴をあけたもの。

板風炉   いたぶろ   風炉の一種。周囲を板でつくり内部に壁
             塗を施したもので、名残の茶事の頃に使
             われる。炉灰を使い、五徳は使わず透木
             を用いる。利休が小田原陣中で好んだの
             が始まりと言われ、利休好みは杉材で土
             壇を丸く塗り上げている。宗旦好みは桐
             材で土壇を角に塗り上げたもの。原叟好
             みは松材で上板を四方切り落とし二つに
             割ってある。

乙御前釜  おとこぜがま 茶湯釜の一種。乙御前はお多福の異名。
             その形姿の釜らしい。平釜・蒲団釜に似
             て口は姥口につくる。1575年2月に
             堺衆を招いた信長茶会に始めて見え、そ
             の後、秀吉は播州三木の別所長冶攻撃の
             付城において口切茶会にこれを使ってい
             る。秀吉が信長から拝領したのがわかる。
             大徳寺茶会にも、北野大茶会にも用いている。

園城寺釜おんじょうじかま 名物釜。松平不昧所持、昭和に入って松
             平家より東京国立博物館に寄贈された。
             肩に「園城寺」の陽鋳銘がある。園城寺
             との関係は不明。姥口・撫肩で、洗練さ
             れた霰紋が美しい。環付は土筆形。肩の
             一方には唐草紋を陽鋳している。

欠風炉    かきぶろ  鉄風炉の甑や肩の一部が欠けてなくなっ
             たものや、割れを鎹(かすがい)で継い
             だものをいう。破れ風炉(やれぶろ)・
             やつれ風炉ともいって、自然の損傷を侘
             び景色として名残茶などに賞して用いる。
             故意に欠いてつくられたものが多い。