「教えて茶道」Vol,144

「掛物ほど第一の道具はなし」と利休が教えるように、掛物は、茶席に
おいてはたいへん重要な役割をもつものです。茶人達はその文句にこめ
られたこころを敬い、賞玩してきました。禅の高僧による墨蹟や和歌の
色紙、古筆切(こひつぎれ)などがありますが、ただ読めない、難しい
と遠慮せずに、少しでも読めるように努力したいものです。稽古場に掛
けてある一行物や和歌などは、床前で拝見するだけでなく、自分でわか
る、読める文字だけでも読み、先生に「なんと書かれているのですか?」
と尋ねてみたり、またどんな意味なのかを、本で読んで調べるなどの努
力をしてみます。少しでも読めたり、わかる文字が出てくると、掛物を
読んで味わうのが楽しくなります。また花押も歴代の家元のものくらい
は知っておきたいですね。

<釣釜>
三月は釣り釜の季節です。天井から鎖で釜が吊り下げられますから五徳が
不用になりますので、五徳蓋置が用いられたりします。

五徳 ごとく
炉・風炉中に据えて釜をのせる器具。主に鉄製で土製のものもある。
下部の輪から三本の柱が立ち上がり、先端に爪が内側にのびている。
五徳蓋置
五徳形の蓋置き。隠家・火卓とも言う。
台子・袋棚にも用いられるが、普通は炉・風炉中に五徳を使用しない場合
、すなわち切掛風炉・透木風炉・釣釜に使う。
点前に用いる時は輪を上に、飾っておくときは輪を下にして扱う。
鉄製・唐銅・南鐐・陶磁などの物が多い。


先日出席したお茶会の道具を紹介いたします。
掛軸     桃花綻春風 (桃花 春風にほころぶ)  淡々斎
       「綻」は「笑」の字のほうが多いいそうで珍しいそうです。 
花    冨貴草 (牡丹のこと)
花入   青磁 鳳凰耳
香合   木彫 蛤 海松図   祐軒造
釜    鶴首         一圭造
     釣り釜でした
炉縁   真塗り    淡々斎在判
風炉先  千代重    淡々斎在判
長板   真塗り    淡々斎在判
皆具   萬古焼
火箸   南鐐 渦頭       浄益造
薄器   原叟好 老松      春斎
<老松茶器>おいまつちゃき
茶器の一種。原叟好宗左が山崎妙喜庵の袖摺(そですり)松の枝で三十個
を好みに作ったのを始まりとし、平形の身に蝶番(ちょうつがい)付割蓋
が添っており、以後この形を老松と称した。原叟好みは木地摺漆せあるが、
のち溜塗もできた。又蝶番が付いていないものに一灯宗室好みがある。

茶杓   淡々斎作 庭古松   利斎下削
    銘 千丈節
茶碗 黒 歌銘   惺入造
     はれわたる雲井の空にまう鶴は
     くもらぬ御代のためしなるらむ
替    むしあけ      二代長造造
替    御本
菓子器  交趾 菊形        即全造
菓子   三千歳草         叶匠寿庵
干菓子器 一燈好み 菱盆      伊織
干菓子  結び柳  菜の花
煙草盆  銀杏透 桑手付       光春
火入れ 黄瀬戸写 渦彫        即全


<茶杓>自作の茶杓
桃山時代以降、自作の茶杓が多くなりました。利休などの茶人が、自ら
茶杓を作ったのをきっかけに、豊臣秀吉や臣下の武将たちも利休形にな
らった茶杓を作っています。「茶杓は茶人の魂を削りこんだ茶人の刀」
とされ、作意を茶杓に反映させ、形や削りに特徴を出し、美的価値を付
加するようになりました。細川三斎は優美で雅た造形と胡麻竹や煤竹な
どの竹選びに優れ、古田織部は直線的で豪放な造形で風格を見せるなど、
それぞれが個性的で味のある茶杓を作っています。試しに自分で茶杓を
作ってみると、茶杓の味わい方も深まることでしょう。

<訂正>
bP42
内角ねらい、外角→内隅ねらい、外隅

bP43
社日(しゃにち):「社」は土地の神の意。春分、秋分に最も
    近い戌(つちのえ)の日。

戌→戊 つちのえの誤りです。お詫びして訂正いたします。