「教えて茶道」Vol,106

点前だけ上達するのが茶道ではありません。
たとえば、道具の取り合わせには、それぞれの形、材質、色調などのバラ
ンスを吟味する美意識が必要です。
けいこでも自分なりの道具に対する美意識を育てることを考えてください。
水屋にそろっている道具を季節に合わせ、使い分ける。あるいは道具をそ
の日に自分の心や銘に合わせて実際にそろえてみるとか、そのようにして
いると、色の取り合わせや焼き物に興味が起こり、水指と茶碗の取り合わ
せや薄器の蒔絵など、次々と気になるものが出てきます。
そのようにして自然に美意識が養われていくものです。
先生から教えてもらうだけでなく、自分から進んで茶道具を見たり、展示
会や、お茶会に参加して、道具を拝見して、取り合わせを研究したり、本
を読んだり、お茶の文化や教養をいろいろな形で吸収していきたいものです。

<水屋での心得>

水屋は常に清浄であること、整理整頓を心掛けることが基本です。
ですから、点前の後始末の際、道具類を元にあった場所に戻すのが約束と
なっています。
けいこは点前だけでなく水屋の作法も身につけることが大切です。
自分が稽古をするときに、棚から道具類を下ろす前にその位置を、茶巾を
茶巾たらいから引き上げる前にその状態を心に留めておくようにしましょう。
そして戻すときに、次の使う人のことを考えて、清めてから戻します。
また、使いやすいように茶巾を洗ったら、茶巾たらいにひたしておいたり、
茶筅を洗い清めたら、穂先の形を整えておきます。
茶器も使ったものは、掃き清めなおしておくなどの気配りが必要です。
整然とした使いやすい水屋を自分から率先して心掛けるようにしましょう。
自分が使用した道具をかたずけることは勿論ですが、自分より前に稽古を
した人のかたずけを手伝いする配慮もしましょう。

<茶事>についての補足
<送り礼>
楽しい茶事も、薄茶道具拝見が終わると、最後の挨拶となります。
薄茶道具を水屋に下げた亭主は、客一人ひとりと茶事を振りかえって挨拶
を交わします。
客は茶事の感激を胸に、今日の貴重なひとときを感謝する言葉を述べます。
最後に、客は茶室内を拝見の後、退席してにじり口を挟んで、主客無言で
挨拶を交わします。
最後の送り礼が無言であることは、最初の迎付の無言と一対をなしています。
茶の作法には礼をする機会が多いいです。無言の礼は、万感の思いを無言
にこめるもので、意味合いが深いものです。
亭主がいつまでも見送る中、客は露地を去っていきます。


<国語の時間>

稽古に神変あり
物事の習得に必死で取り組み修練すれば、人間の力を超えた境地に達する
ものだという事です。
「神変」は人知でははかり知れない霊妙な変化を言いますが、ここでは天才
的な能力の発揮ということだと思います。それが、日々の稽古や努力で得
られるのであると諺は言っているのです。
「天才とは1パ−セントのひらめきと99パーセントの汗だ」は発明王エジ
ソンの言葉です。
フランスの博物学者・哲学者のビュフォンも「天才は即ち忍耐である」と
言っています。
「努力は天才を生む」と言う言葉さえあります。やはり天才のもとには努力
あるのみということのようです。
江戸初期の仮名草子「大阪物語」や諺集としての「毛吹草」等にも載っている
ことから見て、江戸時代には比較的用いられたようですが、現代では消え
てしまいました。