「教えて茶道」Vol,104

茶道具を粗末に扱わないなんて決まりきったことだと思われるかもしれま
せんが、点前中はどうしても点前の手順の事ばかりに気をとられがちにな
るので、かえって注意が必要です。例えば、茶を茶碗に入れた後、茶碗の
縁で、茶杓を打ちますが、これは茶杓についている茶をはらう為なので軽
く打つことです。強く打つと、場合によっては茶碗が欠けたり、ひびが入
ったりします。
特に楽茶碗などの土のものはもろいので、指を添えて軽く打つようにしま
す。点前中は気持ちに余裕をもち、状況をよく見極める判断力も必要です。
点前の手順だけを覚えればいいと思っていると、思わぬ落とし穴が潜んで
いると肝に銘じておきたいものです。

5月からは風炉になりました。柄杓の扱いが見せ場になります。
前にも申し上げましたが、もう一度説明を。

柄杓の扱いが、置柄杓(おきびしゃく)切柄杓(きりびしゃく)
引き柄杓(ひきびしゃく)をします。
これは、昔、弓を鳴らして魔よけをしたと言う故事から、弓の所作を取り
入れた作法です。
置柄杓は、湯を汲み終わったあと柄杓を釜の口に置く際、柄杓の中節のと
     ころを右手と人差し指とで柄の横から押さえるようにして置く。
切柄杓は、茶碗に茶を入れ、湯を汲んで必要なだけ入れ、残りを釜に戻し、
     柄杓を釜の上に置く時、合を仰向けにして親指と人差し指の付
     け根に柄を預け、四本指を揃えてのばし、柄と直角に交わるよ
     うにする。
引柄杓は、水を釜や茶碗に入れ、再び釜の口に置く時の扱いで、五本の指
     を揃えて柄の切り止めまで、引いて柄を釜に置く。

少々、扱いにくい、めんどうだと思えますが、
お客様にお見せしている、難しそうにせず、優雅に見せるのも、これ
もおもてなしの一つと思えば、稽古の励みになると思います。

柄杓(ひしゃく)について
差通し(さしとうし)と月形(つきがた)、がある。

差通しは、合(ごう、湯を汲む丸い部分)を柄が差し通った柄杓で、
     台子(だいす)、長板の総飾りの時に用いる。
     杓立(しゃくたて)に飾るので飾り柄杓ともいう。
月形は、 一般の点前に使うもので、風炉用と炉用がある。
 風炉用は、合が小ぶりのもので、柄の切止の身の方が削ってある。
 炉用は、合が大ぶりで、切止の皮目の方が削ってある。
「み そぎぞ なつのしるしなり」と、覚えたものです。


<茶事>についての補足
<後炭 ごすみ>
正式な茶事では後炭手前が行われます。後炭は、初炭でおこした炭が、濃
茶を終わって衰えているのを、薄茶を点てる前に調え直すためにあります。
一般に正午の茶事では、炉でも風炉でも、濃茶と薄茶の間で後炭手前があ
りますが、朝茶や夜伽の茶事のように、濃茶から続き薄茶という流れの場
合は行わないません。
又、薄茶でも茶室が変る場合も、炭を直す意味合いがなくなるので省略し
ます。
亭主は後炭が炭をついだあと、水次を運び出し釜に水を注ぎます。
濡れた茶巾で熱い釜をぬぐうと、ぬれ跡がさっと乾く。その風情もまた
見せ場です。

<国語の時間>
稽古(けいこ)

剣道などの武芸や、茶道・華道といった芸事を習うこと、練習することを
いう。
稽古の「稽」は考えるという意味を持っており、「稽古」は本来、古
(いにしえ)を稽(かんが)える、昔のことを考え調べて、そこから今どのよ
うにすべきかなどを正しく知る、といった意を表わす漢語であった。 
ここから書を読んで学問する、学ぶの意が生じた。
日本では中世以降、学問に限らず武術や芸能など学ぶ、習うことにも用い
るようになった。